新しい給食調理場建設が決まりましたので、これまでの経緯をまとめました。

投稿者: | 2012年12月26日

平成24年12月19日の足利市議会12月議会最終日に、老朽化が著しい公設公営の東部学校給食共同調理場(以下、東部給食調理場)と公設民営の南部第三学校給食共同調理場(以下、南部給食調理場)のふたつの調理場を統合して、今福町地内の市有地に、炊飯工場と新たにアレルギー対応の給食提供が可能な公設民営の学校給食共同調理場(以下、新しい給食調理場)を整備しようとする議案の承認を頂くことができました。

学校給食共同調理場

この件につきましては、平成23年9月13日足利市議会教育経済常任委員協議会を皮切りに1年にわたって議会に対し、丁寧な説明をしてきました。
そうした中で、市議会全員協議会や12月議会で、いくつか質疑や反対意見がありましたので、改めてそれに対する私の考え方を申し述べます。

まず、主な質疑や反対意見は、以下の4つに集約出ると思います。

Ⅰ、請負業者を選定するに際し、従来型の公共事業の発注方式(以下、従来方式)ではなく、建設完了後に施設の所有権を市が取得できることを条件とした公募型プロポーザル方式(以下、公募方式)を採用し、契約方法を10年間のリース方式にしたのはなぜか。
Ⅱ、足利市は、平成16年と平成19年に、それぞれ市内のA社とB社に、民設民営で給食調理業務を委託して、これまでうまくいっている。また、この2社からは過去に調理業務の増食要望もでているのだから、今回、公設公営と公設民営の調理場を統合するに当たり、調理数を減らして、その分を民間2社へ回して、委託数を増やすべきだ(割合にすると、三分の二を民間2社にということ)。
Ⅲ、児童生徒数の減少が見込まれる中、調理数の精査と施設規模の議論がつくされていない。
Ⅳ、新しい公設民営の調理場の委託業者に、南部給食調理場の委託業者である足利市学校給食協同組合が予定されていることがおかしい。

というものでした。

まず、Iについてですが、リース会社への公募方式を採用した理由として4つあります。
(1)補助が少ない:
自治体が行う給食調理場建設については、市営住宅建設などと異なり、国の補助金が、総事業費の数%しかでない。従って、発注や契約方法については自治体なりに工夫をする必要があった。
(2)PPP導入による効率化:
国の定めた基準単価を採用して市が直接発注する従来方式に比べ、PPP(Public Private Partnership)的な考えを導入したリース方式では、民間事業者が設計・施工・維持管理を包括的に実施することになるので、それぞれを分離発注す る必要がない分、効率化が図れる。また、国の定めた基準単価にとらわれる必要がないため、実勢に合わせたレベルで計算できるので、事業費の大幅な縮減が見 込める。
(3)財政の平準化:
従来方式だと、初年度に事業費の全額負担をすることになるが、リース方式であれば、単年度当たりの財政支出を平準化することができる。
(4)財産の取得:
建設完了時に所有権を足利市が取得できる上に、民間事業者によってリース期間(10年間)中の効率的な保守管理体制が確保される。
(5)工期の短縮:
通常の公共事業として行う場合、基本設計・実施設計・施工という手順を踏むので工期が4年かかるところ、リース会社への一括発注なので工期を1年半と大幅に短縮できる。

結果として、総事業費は18億9500万円余となりました。
これは、今年9月に稼働した近隣市の給食調理場と比べると、総事業費はほぼ同額ながら、給食調理可能食数で3割増、さらに、13,500人分の炊飯工場までついていますので、相当な効率化がはかれました。また、市の通常の公共事業としての試算と比べると、約40%削減できた計算となり、今回の取り組みは、想定以上の成果を得ることができました。

給食調理場建設費比較

次に、Ⅱについてですが、
学校給食調理場は、現在4つ【A社(民間4000食)、B社(民間3000食)、東部給食調理場(公設公営3500食)、南部給食調理場(公設民営3000食)】あります。

そうした中で、これまでにA社及びB社から調理業務の増食要望が寄せられました。

現状、A社には4000食、B社には3000食の委託を行っており、今回統合予定の調理場が6500食ですから、すでにA社+B社で過半数を超えています。

給食調理場は、「学校給食法」において市長が設置することになっており、学校給食を実施するにあたって、最も優先すべきことは安定的な供給体制を維持することです。
今回の公設民営の新しい給食調理場で全体の給食数の約半数を維持していれば、安定的に給食調理業務を行うことは可能ですが、仮に、A社、B社にそれぞれ1000食ずつ増やすとなると、Aが5000食、Bが4000食で合計9000食となり、それに伴い新しい給食調理場は4500食となりますので、三分の二を民間企業であるA,B2社に委託するということになります。

これは、事業の実施主体である市として、責任ある安定供給体制の構築という視点からみると、民間企業に任せ過ぎであり、適切ではないと考えます。
従いまして、市の基本方針として、最低でも給食数の約半分は今回の新しい給食調理場が担うということにしました。

私は、市長に就任以来、7つの民営化に鋭意取り組んでまいりました。
給食業務の民営化もそのひとつですが、これは完全に民間委託するということではなく、学校給食の実施主体である市が、安心安全な給食を安定的に提供しなければならない給食業務の特殊性を鑑み、行政の責任を明確にしつつ、民間の活力、効率性を考慮して公設公営を公設民営にするという民営化を進めています。

ところで、既存の2つの民間企業であるA社と、B社への民間委託は、本案に反対している議員が指摘するように、これまで本当にうまくいってきたのでしょうか。議会などで盛んにそのような言い方をされるものですから、改めて私なりに調べてみました。

結論から申し上げれば、学校給食の提供という点では、民間2社におかれましては堅実に仕事をしていただいており、この点は大変ありがたいと思っています。
しかし、です。
給食業務の委託費を決める上での、施設整備費と業務運営費の算出根拠などに好ましくない点が見受けられました。これまでこのような状況を把握しきれなかったことは私の不明ですが、この反対している議員のおかげで気づくことができました。

A社については平成15年度に、そしてB社については平成18年度に委託しましたが、会社側が実質的に1円も支出することなく、市の予算で給食調理のための建物、設備、土地代など一切合切賄われています。委託期間は、いずれも28年間で、現時点はもちろん、その後においても当該企業の所有物となってしまうのです。
要するに、平成15年度と平成18年度の案件は、会社側のリスクなしで、給食業務が毎年毎年安定的に請け負えるようなスキームになっていたのです。これではとても民設民営とはいえません。

その上で、特にA社については、平成16年度より3000食分の給食の調理業務を委託され、さらに平成19年度には、既存の東部給食調理場で対応可能な状況であったにもかかわらず、明確な理由がないままA社の調理場に再び税金で設備投資をした上で、1000食分の増食がなされ、計4000食分の調理業務が行われるようになりました。

さらには、税金でつくった学校給食用の釜を、学校給食の調理前と後に産業弁当の調理としても使用しており、しかも、光熱水費、保守点検委託費、修繕費などの業務運営費は、学校給食分と産業弁当分で按分清算ができていますが(比率については検討の余地があります)、建物建設費や釜などの施設整備費は按分清算がなされておらず、客観的に見て、非常に優遇されているといえます。
その意味で、反対している議員が言うところの、うまくいっているという言葉は、素直にはうなずけないものがあります。

結局のところ、当時とすれば知恵を絞った方法だったのかもしれませんが、これは、行政改革大綱で求めている民間のノウハウの活用、民間資金の調達などの、いわゆる民間活力の導入でもなんでもなく、公設民営の変形で、日本広しと言えどもこのような例は他に聞いたことがありません。

従いまして、今後トータルでA社とは給食調理業務の委託の在り方について、これまで以上に掘り下げた協議をしていかなければならないと考えています。

次にⅢについてですが、これは足利市に限らず我が国全体の傾向として、少子化傾向が続いていますが、それはそれとして、現状の子どもの数に応じた給食数を確保する必要があるわけですから、東部給食調理場の3500食と南部給食調理場の3000食を合わせた6500食が調理できる新しい給食調理場を用意するのは当然のことです。

次にⅣについてですが、新しい給食調理場の委託業者を南部給食共同調理場の委託業者である足利市学校給食協同組合に任せる理由として3つあります。

(1)統合対象の南部給食調理場において、これまでの炊飯業務と調理業務を請け負っていただき、給食業務を熟知しているなど安定した実績がある。
(2)市の都合で、統合移転することにしているので、新しい給食調理場で引き続き業務を行って頂くことは合理的。
(3)文部省通知の「学校給食米飯導入促進事業について」を踏まえれば、「学校給食用の委託炊飯設備を設置する事業にあっては、学校給食用パン製造業者又はこれらの者の出資者とする会社」となっており、新しい給食調理場の米飯業務は、南部給食調理場の委託業者である、足利市学校給食協同組合しかない。

以上、今回の新しい給食調理場建設にあたっては、足利市の方針は一貫しており、結果として議会の過半数のご理解を得ることができました。

改めて、ご賛同頂いた議員の皆様に心から感謝申し上げます。

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