足利市民総発電所構想 ~スマートシティを目指して~

足利市民総発電所構想とはちょっと奇をてらった表現かもしれませんが、昨年の東日本大震災による原発停止の影響により、この夏の電力供給も厳しさが増している状況を鑑み、本年度平成24年度より、足利市を挙げて一層の効率的・効果的な電力の創電、節電、蓄電をはかり、いわゆるスマートシティ(*1)を目指すために、本構想を推進することとしました。

●創電、節電、蓄電による5つの原資確保策

具体的には、まず原資の確保策として
①既存の公共施設に設置されている太陽光パネルによる発電収入分
公共施設の屋根をメガソーラー事業者に貸し出すことによる賃料収入分
③公共施設の使用エネルギーや室内環境を把握し制御することで節電につなげるシステムであるベムス(BEMS*2)の導入による電気料金の節約分
④特定規模電気(PPS)事業者への契約変更による電気料金の節約分(平成24年度は約750万円)
⑤畜電池を使った夜間電力等の有効に活用による電気料金の節約分
を見込んでいます。
その結果、震災前の平成21年度と比較してどれだけ電気料金が節約できたか等を数字で表し、その浮いた分を財源にして、平成25年度より、まずは家庭の電気機器の電力使用状況を把握し制御することで節電につなげるシステムであるヘムス (HEMS*3)の導入を支援します(もちろん、これまで行ってきた各家庭における太陽光パネルの設置補助も継続します)。これにより、予算上の新たな負担が生じることなく持続可能な形で、“発電”に関して全ての市民による間接的貢献が可能となる仕組みを整備してまいります。
この節電につながるヘムスについては、日本ではようやく端緒についたところです。最近ではヘムスを含めた電力消費制御システムについて、ひと口に「電力の見える化」といわれますが、これにより各家庭の消費電力をモニター等で随時確認することができれば、相当な節電への動機づけとなり、それが結果として家計の節約にもつながるはずです。
その動機づけをさらに高めるために、足利市版節電エコポイントも検討していきたいと考えています。

●地域活性化総合特区取得に向けて

そして中長期的な視点ですが、足利市は、北半分は森林に囲まれ、大消費地である首都圏にも近いことから、間伐材や廃材を使った木質バイオマス発電も可能性があると考えられることから、今後の検討課題と位置付けています。さらには、河川敷におけるメガソーラー設置の可能性、そして建物の性能を上げる事により、高性能の熱交換器による空調設備だけで、冷暖房器具が不要なパッシブハウスの普及促進の是非についても研究したいと思います。
それらを含めた本構想の具現化をはかる上でも、今後、地域活性化総合特区の取得に向けた手続きを進めていく予定です。

以上、これらを総称して「足利市民総発電所構想」と名付けました。

●2つの全国的に先駆けた取組み

特に、②の屋根貸し事業そして③の公共施設へのBEMSの導入につきましては、全国的にも先駆けた取組みとなっています。
まず②屋根貸し事業ですが、平成24年7月1日より、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」による「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」がスタートしました。
この制度は、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)によって発電した電力を、東京電力などの電気事業者が一定の期間と価格で買い取ることを義務付けるものですが、太陽光発電の買取価格は「1キロワット時当たり42円」となりました。
そこで足利市では、この制度の実施にともない、太陽光発電事業を行う事業者に対し、災害や電力需給のひっ迫等による停電時に公共施設に電気を供給することを条件として、公共施設の屋根を有償で貸出すこととしました。
これまでは公共施設の屋根に太陽光パネルを設置する場合には、公設ですから設置費が民間と比べて高くなり、採算の取れる状況ではありませんでした。その結果、公共施設への太陽光パネルの設置は思うようには進まなかったというのが現状です。
そうした中、この固定買取制度が始まったことを受けて、民間企業でもこれをビジネスチャンスにしようという機運が広がっています。そこで、市として、原発事故などの時代背景や学校教育における環境教育推進の必要性、さらには再生可能エネルギーの利用を促進し、温室効果ガスの発生の抑制を示す意味でも、早急に設置可能な全ての公共施設に太陽光パネルを設置するために、民間のメガソーラー事業者に公共施設の屋根を貸出す事業を推進することにしました。
これにより、市には賃貸収入が、事業者にはビジネスチャンスが、そして市民にはそれに伴う間接的メリットがあり、いわば3方よしの施策を展開することができました。

次に③公共施設へのBEMSの導入ですが、図でお示しいたしました通り、スマート通信インターフェイス事業として市内の公共施設へBEMSを導入します。

足利市民総発電所構想

それをネットワークで結んで一元管理することによって、各施設の電力消費量が一目でわかるようにします。それにより、電気の無駄使いを減らせることはもちろん、基本料金を決めるピーク電力使用量を抑えることで、電気料金の節約につなげることができます。

●お出かけ節電キャンペーン

また、足利市では市民に無理なく節電につながる行動を起こして頂くための取組みとして、真夏の平日の電力需要が高まる時間帯に、あえて外出して頂く「お出かけ節電キャンペーン」も展開しています。
具体的には、昨年に引き続き、今年も渡良瀬ウオーターパーク等、市内3か所の市営プールを平日(昼間)無料開放しました。

以上、本構想は、規模は小さいながらも、足利市が全国にさきがけて試みる大きな一歩になっています。
そして、こうした取組みを全国に発信し、広げていくことができれば、原子力発電所の極小化もしくは必要のない時代を、説得力をもった形で作り上げていくことができると考えています。

*1 スマートシティとは:
スマートグリッドの主要な技術(分散型発電システム、再生可能エネルギー、電気自動車による交通、高効率なビル・家庭の電気使用など)を使って、都市全体のエネルギー構造を高度に効率化した都市づくりの構想のことです。

*2 ベムス(BEMS)とは:
BEMSとはBuilding and Energy Management Systemの略で、情報技術を駆使して業務用ビルなどのエネルギーを管理するシステム。ビルなどの建築物において、各種設備のエネルギー使用状況を把握し、制御することで、ビル内の快適な環境を維持しながら省エネを推進することができる。

*3 ヘムス(HEMS)とは:
Home Energy Management System(ホームエネルギー管理システム )の略で、家庭内のエネルギー管理を行う「家庭版BEMS」。家電製品や給湯機器をネットワークでつなぎ、自動制御する。需要家に対して省エネを喚起したり、各機器の使用量を制限することでエネルギー消費量を抑制したりすることができる。

東京新聞記事 20120414

朝日新聞記事 20120414

毎日新聞記事 20120414

下野新聞記事 20120414

読売新聞記事 20120414

東京新聞1面記事 20120421

下野新聞記事 20120421

毎日新聞記事 20120424

読売新聞記事 20120424

下野新聞記事 20120705

毎日新聞記事 20120705

読売新聞記事 20120713

東京新聞記事 20120714

日本経済新聞記事 20120720

日経産業新聞 20120928

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