全国市長会中国訪問記

投稿者: | 2012年4月29日

21012年4月23日月曜日から28日土曜日まで、全国市長会中国訪問団の一員として北京、武漢、蘇州、上海の4市を視察してきました。

23日:羽田⇒北京(2018万人)
北京の交通渋滞は、まるでお盆の帰省ラッシュのよう。来るたびに激しくなっているような気がします。北京の高速道路網の整備等が経済発展に伴う自動車数の増加に追いついていかない状況が続いているようです。
また、建設ラッシュも相変わらず。先日、2012年4月13日、中国国家統計局より発表された中国第1四半期(1-3月)のGDPが8.1%増というのもうなずける気がします。

また、道路わきには「北京精神 愛国 包容 創新 厚徳」という官製看板が至る所に。いかにも社会主義国ならではのスローガンで、あえてこうしたことを書かなければならない理由があるのではないか、そんな視点で興味がわきました。

798芸術区視察:
1950年代に当時の東ドイツが建てた工場跡地が、芸術区として活用されていました。ここは若者に人気のスポットらしく、新郎新婦が記念写真を撮っている光景にも出くわしました。
また、表現の自由については、中国では過度な規制がかかっているという印象がありましたが、ご覧の写真のように毛沢東がコカコーラとからめてパロディ?化されているのには中国の社会環境の変化が着実に進んでいるという印象を受けます。
毛沢東とコカコーラ

自治体国際化協会(会長:麻生渡福岡県知事)北京事務所訪問:
この団体の正式名は、財団法人自治体国際化協会と称しまして「地方公共団体を主体とした地域の国際化推進事業の支援並びに諸外国における地方行財政制度及びその動向の調査研究等を行うとともに、地方公共団体の海外における国際化推進のための活動に対する支援等を行い、国際化に対応した地域社会の振興及び地方公共団体の人材の養成を図り、もって地方自治の発展に寄与すること」を目的に1988年に設立されました。

要するに自治体間の国際交流の一層の推進をはかるための支援機関といった位置づけのようですが、残念ながらこれまで自治体の長たる我々にこの団体の行っている情報があまり入ってきませんでした。
そこで、
「例えば北京事務所であれば、日中で友好都市を締結している日本の300を超える自治体に対して、メーリングリストを作って、北京で収集されている自治体交流に関する各種情報をタイムリーに発信してはどうか」
といった要望をしました。
せっかくこうした組織があるのですから、ぜひ日中友好の橋渡し役のひとつとしての役割をさらに果たして頂ければと思います。

在中国日本大使館表敬訪問:
丹羽大使と面会。

夕:釣魚台で中日友好協会主催の歓迎会。

24日:
中国国家地震緊急救援センター視察:
当施設は、北京から北に約2時間行ったところにありました。
中国の防災対策としては、2000年の「全国防震減災工作会議」において、地震観測・予報、震災防御、応急救援能力の強化を地震防災分野の主要3大任務に掲げ、2004年10月に国内外の応急救援技術の研究、人員の訓練を担う中国地震応急捜救センター(NERSS)を設立、2006年10月には地震防災にかかる取り組みの強化を国家の重要施策の一つとして明確に位置付け、中国初の総合防災計画「国家防震減災計画(2006-2020)」の発布、2008年末に「防震減災法」の改正を行う等法制度面の整備を含め体制整備が行われています。

ご存じの通り、2008年に四川省で大震災が発生しましたが、それ以前から中国でも地震対策は重要な課題となっていたようです。
また、防災対策の具体的なスキルの面では、日本のノウハウが活かされていまして、東京消防庁の職員が3年間の予定で指導者として赴任されていました。

25日:北京⇒武漢(910万人)
武漢市人民政府表敬訪問:
我々を迎えた武漢市副市長は、1965年7月生まれとのことで、私とは同年代。1000万都市の副市長として、活力が漲った様子が印象的でした。武漢は教育の街としても知られており、中国の有名大学が立地して学生がとても多く、彼はその中で最も有名な武漢大学の出身だそうです。

また武漢は、長江を泳いで渡った毛沢東が再起を期した場所として有名だそうで、そのときのことを後に毛沢東が詩に表現しており、その中に孔子の一節「子在川上曰、逝者如斯夫、不舎昼夜」が引用されていました。
これは、「孔子は川のほとりに立って言われた。歳月はちょうどこの水のようなものだ。昼も夜も休むことなく流れ続ける」という意味ですが、ちょうど鴨長明の方丈記を彷彿させます。論語は、日中問わず、後世に多大な影響を及ぼしているということを改めて感じました。

昼:武漢市人民政府主催歓迎会

湖北省地震局表敬訪問:
24時間体制で地震監視体制が取られているということが目を引きました。

北京しかり、湖北省しかり、日本に比べれば地震の少ない中国で地震対策に相当な力を注いでいるのですから、日本ではより一層の防災対策がなされてしかるべきという感想を持ちました。

湖北省環境省表敬訪問:
省としての環境政策全般の管理部門なので、日本の都道府県と同様、全体を統括しているという印象です。

26日:武漢⇒蘇州(624万人)
蘇州ゴミ焼却施設(光大環保能源有限公司)視察:
本社は香港で、香港市場に上場。いわゆるグリーンビジネス全般を展開。創立は2004年。
当施設のゴミ処理量は2012年現在2500t/日(蘇州全体のゴミ排出量は4000t/日)。今後、3550t/日の処理が可能になる設備増強を行う予定。技術はベルギーから、管理ノウハウは日本からとのこと。
ちなみに足利市の焼却施設は、160t/日のゴミ処理を行っています。

またここでは発電も行っていて、1日当たり920MWhの発電能力があるということです。その内、82%は売電、18%は自工場で消費されています。
これほどのゴミ処理能力と発電能力を兼ね備えた施設を私は見たことがありません。

ともあれ、社会主義国であるにもかかわらず、現在日本で進められつつあるPPP的な手法を取り入れた民間活力の導入によるゴミ処理施設の整備等が、中国では既に大規模な形でなされているという点が特筆されます。

光大環保能源有限公司

蘇州災害時避難施設視察:
蘇州では街の中に広大な公園があり、そこが災害時の避難場所が指定されていました。

夕:蘇州市人民政府主催歓迎会

27日:蘇州⇒上海(1412万人)
久保田農機有限公司視察
日系企業であるクボタの中国子会社を視察。
中国の農業政策として、特に田植えの機械化を進めており、それに連動する形で、クボタはじめ日本の農機具メーカーのシェアが広がっています。
特にクボタは、中国では稲の刈り取りを業とする専門集団がおり、その集団の移動と共に、部品の供給について遅れることなく供給する体制を整えたことによって信頼を獲得し、その分野のシェアを60%に伸ばすことができたそうです。
中国の農業生産効率は今後益々高まるでしょうし、一層の効率化に向けて日本企業の関与する余地はまだまだありそうです。

夕:上海市人民政府主催歓迎会

28日:上海⇒羽田

今回の4都市を回っただけでも、今後、日中間の関係は益々重要性が増し密接になっていくということが容易に想像できました。その意味では、政治的にギクシャクした部分もありますが、まずは子ども達の交流や経済連携等を市としてもサポートしながら、未来を見据えた友好的パートナーとして日中両国が良好な関係を築くことが極めて大事だということを痛感した視察となりました。

参加市長は以下の通りです。
団長:森民夫長岡市長
団員:高橋定敏留萌市長
団員:三木正夫須坂市長
団員:神谷学安城市長
団員:中村慎司紀之川市長
団員:西岡憲康備前市長
団員:新貝正勝中津市長
団員:大豆生田実足利市長

下野新聞記事 20120511

下野新聞記事 20120413

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