解散させるだけでは統一教会問題は絶対に解決しない根本的な理由

投稿者: | 2022年11月13日


11月11日、永岡文部科学相はいわゆる統一教会に対して、宗教法人法に基づく質問権の行使をすると明らかにしました。

10月19日には、岸田首相が宗教法人法の解散命令の要件に「民法の不法行為は該当しない」としていた前日の答弁を翻し、「民法の不法行為も入り得ると答弁したことも踏まえれば、ようやく統一教会の解散への道筋が見えてきたと評価したいと思います。

しかしながら、なのです。

解散はあくまでも統一教会による被害の根絶に向けた“一里塚”にすぎません。
なぜなら、解散させたからといっても、マインドコントロールが解けて統一教会の信者がいなくなるわけではありませんし、彼らの活動がゼロになるわけでもないので、被害もなくなりません。

むしろより小さな集団となって監視が及ばなくなり、悪質化するおそれさえあります。
現時点でも、いくつもの統一教会の分派ができており、少なくとも10の分派が現在活動中です。

統一教会による被害の根絶を目指すのであれば、ここはそもそも論に立ち返って、解散だけではなく、宗教法人を取り締まるという概念が希薄な「宗教法人法の改正」と、カルトに分類される団体にはもっと厳しい規制を行える「反セクト法の制定」をセットにした法整備をすべきと思います。

最近の報道を見ますと、このままでは、この統一教会解散と霊感商法での高額寄付を取り消しやすくする消費者契約法の改正そして相談体制の整備をもって幕引きのような世間の雰囲気が生じかねない懸念を持ちます。

従いまして、そうした流れに対しそれでは不十分だという警鐘を鳴らし続けるという意味と世論のさらなる喚起のために私は【統一教会に対する法規制を!】というオンライン署名サイトを立ち上げ、賛同者を募る活動を始めました。

その意味では、まだまだ道が遠く粘り強い取り組みが必要です。
そこで、以下のような「ふたつの切り分け」という視点でさらにこの問題を掘り下げて解説させていただきます。

ひとつは、以前から指摘しています「宗教とカルトの切り分け」です。
そしてもうひとつは、「統一教会の支配者層と末端信者の切り分け」です。

まず、「宗教とカルトの切り分け」についてですが、八百万神に象徴される多神教の国である日本は、正月は神社に初詣に行き、結婚式はチャペルで挙げ、彼岸やお盆はお寺にお墓参りをするなど、様々な宗教を社会の中に受け入れて生活の一部に昇華させてきました。
私は、これは日本人の長年の知恵であると前向きに受け止めておりますが、一方で宗教とカルトも一緒にして受け入れてしまいかねない土壌もあるという側面も否定できません。
それ故、宗教とカルトの切り分けができていない識者や政治家が多く見受けられ、議論がかみ合わないのではないかと感じます。

例えば、サンジャポの太田光氏に至っては、統一教会はまるで普通の宗教であるかのような思い込みで公共の電波上で好き勝手な発言を繰り返しており、得意の炎上商売にしてはちとやり過ぎているように思えます。

そして、渦中の萩生田光一自民党政調会長は、「信教の自由」を盾に国による解散請求は難しいと話していました(10月2日)。

結局のところ、彼らは宗教とカルトの切り分けができていないのです。
もしくは何らかの理由により、統一教会はカルトであるということを認めたくはないのかもしれません。
これでは、統一教会の本質を見誤ることになりかねません。

では具体的にどのように切り分けるかという点ですが、フランスの反セクト法の「セクトを識別するための10の基準」が参考になると思います。
Wikipediaによればその基準として

  1. 精神的不安定化
  2. 法外な金銭要求
  3. 元の生活からの意図的な引き離し
  4. 身体の完全性への加害
  5. 児童の加入強要
  6. 何らかの反社会的な言質
  7. 公序への侵害
  8. 多大な司法的闘争
  9. 通常の経済流通経路からの逸脱
  10. 公権力への浸透の企て

があげられていますが、統一教会はほぼ全ての項目でその条件を満たしているではありませんか。それ故、フランスでは統一教会はカルト団体として認定されているのです。

しかしながら、日本ではあのオウムによる地下鉄サリン事件があったにもかかわらず、そうした機運は盛り上がりませんでした。
今になってみれば、背景に統一教会から選挙支援等を受けている保守政治家がいたからと知れば、全て納得できる話です。

宗教とカルトの切り分け、つまり「統一教会は宗教ではなくカルトである」ということがそうした基準により明確になれば、統一教会を擁護する人も考え方を改めざるを得ないでしょうし、「宗教法人法の改正」と「反セクト法の制定」の必要性に対する理解も深まるはずです。

次に、「統一教会の支配層と末端信者の切り分け」がなぜ必要なのかといいますと、末端の信者は、脱マインドコントロールの手法により、統一教会から脱会救出し、家族のもとに取り戻せる可能性があるからです。

例えば、橋下徹氏は10月3日の情報番組で、統一教会に関して「信者の個別的な違法行為の話と教団の幹部たちが本当に違法な犯罪行為をしていたのか、この辺がごっちゃになった議論になっていた(分けて議論すべき)」という趣旨のことを述べていますが、それについては既に統一教会が組織的に行ったという事例が民事裁判で確定しており、そのような分け方はあまり意味がありません。

そうではなく、例えば渋谷の一等地に豪邸を所有していたり、子女を統一教会が運営する韓国の学校に留学させている幹部信者などの支配者層(への追及)と、自己破産をせざるを得ない状況にまで追い込まれている末端信者(の脱会支援)とを切り分けて議論すべきなのです。

10月4日の勅使河原秀行改革推進本部長の記者会見を見ても、「月収の3割を超える献金をした場合は記録する」という発言していますが、これは逆に言えば「3割までは記録しないし、歓迎する」ということであり、そもそも月収の3割という負担が社会通念上とんでもないレベルであるということが、支配者層は全く分かっていません。

一方で、末端の信者は、基本的には真面目で優秀な方が多いですから、支配者層に言われるままにこつこつと献金をし、いざ選挙となれば寝る間も惜しまず選挙の支援をし、将来は合同結婚式をすることを夢に見ながら生活しているのです。

そうした状況を知れば知るほど、末端信者らが日本の経済社会システムの中で、本来の能力を活かせないまま無為に時間と労力を浪費してしまっていることが心底残念でなりません。
私は、統一教会のあやまちに気づき脱会した信者の方々と何十人もお会いしてきましたが、彼らは日本社会に復帰し、日本社会の一員としてすばらしい能力を発揮しています。

「子供たちを脱会させたい」
という思いをもった家族は、末端信者の数だけいると言っても過言ではありません。
しかしながら、統一教会からの脱会に向けた取り組みは、何の社会的支援もないまま、小さなグループで断続的に行われているのが現状です。
そして実際に話し合いの場を設定すると、統一教会側が信者とその家族の話し合いを邪魔立てして、思うような進展が見られないということも度々ありました。

さらに、そうした脱会救出作業をボランティアで取り組んでいる方々にとっては、民事訴訟になるリスクも抱えており、なかなか荷が重い作業でもあるのです。

だからこそ、北朝鮮に拉致された被害者の救出への取り組み同様、統一教会による「もうひとつの拉致」被害者ともいえる末端信者の脱会救出への取り組みも国を挙げてするべき課題だと思います。

もちろん本来であれば、憲法でも保証されている信教の自由を尊重して、誰がどんな宗教を信仰しても規制すべきでありません。何を信じようが勝手なのです。
しかしながら、それが宗教ではなくカルトに分類されるものであれば、話は別、です。

先の10項目で示されているとおり、統一教会は社会に対して様々な問題を引き越しており、そこに入信した人は完全にマインドコントロールにかかってしまっていますので、ほとんどの場合、自ら抜け出すことが極めて難しく「自助」で解決できるレベルではありません。さらには家族やその周辺の方々の脱会へ向けた協力という「共助」があっても、統一教会側が信者を家族との話し合いに行かせないようにしており、話し合いの場をつくることさえできないというのが現状です。

従いまして、「自助」「共助」で解決ができなければ、「公助」により解決していくしかありません。

具体的には、まずは「宗教法人法改正」です。
この大事なポイントは、今回のように、時の首相の裁量で一夜にして民事の不法行為が解散請求の要件に含まれるか否かが変えられてしまうというのは行政運営上望ましいことではありませんから、そのようなことが今後繰り返されないようにするために、憲法20条の信教の自由は保障しつつ、宗教法人法の中で宗教法人を取り締まるという概念を明確に規定し、政権がどう変わろうとも裁量の幅が大きくぶれないようにすべきだと思います。

次に「反セクト法の制定」の大事なポイントは、カルトに分類される団体には厳しい規制をすべきであるということで、以下の3つの項目はその建付けに組み入れるべきと思います。

1,カルトからの信者の一定期間の切り離し
既存の人身保護法を応用して、カルトからの信者の一定期間の切り離しができる条項を組み入れるべきです。
これにより、家族が裁判所に申し立てをして認められれば、信者を一定期間カルトから切り離すことができ、家族と脱会に向けた話し合いを何度でもすることができるようになりますので、解決への可能性を高めることができます。

2,カルト信者の相続財産等の保全
既存の成年後見制度を応用して、カルト信者の後見人を定めることによって、カルト信者が受け取った親からの相続財産等のカルトへの不当献金を防ぐことができる条項を組み入れるべきです。

3,暴力団対策法の使用者責任と同様の規制をカルトにも
令和3年3月11日、指定暴力団の組員らによる特殊詐欺事件をめぐり、暴力団トップに使用者責任があるとして賠償金の支払いを命じた判決が最高裁で確定しました。
カルトに対してもこれと同様に、信者の不法行為に対しては使用者(カルトの支配者層)にも責任を持たせるようにすれば、相当な予防効果が期待できます。

もちろん、権力の乱用を防ぐために、こうした制度の適用は解散命令が出されたカルトに限定してもいいでしょう。

以上、統一教会の「解散命令」を請求する腹を固めた岸田首相の決意は評価できますが、統一教会による被害を根絶させるには、「統一教会解散」だけではなく、「宗教法人法の改正」や「反セクト法の制定」も並行して国会で議論の俎上に載せていく必要があると思います。

是非とも、統一教会との関係が指摘された保守政治家に置かれましては、言葉だけの反省で済ませるのではなく、むしろこれを奇貨としてとらえ、保守の核心である愛国心をもう一度自らの中に呼び覚ましていただき、実際の行動でその矜持を示していただきたいものです。

日本のために、保守政治家がするべきことは明らかなのですから。

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