子ども手当に異議あり【現場から国を変える会発足】

「とても問題が多い」
これが子ども手当の関連法案が国会を通過する際に感じた私の率直な感想です。

企業では資金を活用する際に、投資対効果を十分に検討します。
しかし、政治の場合は往々にしてそうしたことを度外視した大盤振る舞いがなされがちです。
それが結果としていい方向に向けばいいのですが大方は期待はずれで、なんでこんなことしたの?という例は数え切れません。
どうやら子ども手当もまたそのひとつだったようです。

一例を挙げますと、給食費や保育料を滞納している家庭にも子ども手当を満額銀行振り込みすることになっています。
これでは真面目に納めている人が馬鹿を見ることになりかねません。
どうしてこのような制度にするのでしょうか?現場を見ずに霞ヶ関だけで考えているからこういうことになるのではないかとさえ思えます。
しかたありませんので足利市としては、そうした世帯に関しては市役所の窓口で現金手渡しとさせていただき、その場で滞納改善相談をして滞納分をお納めいただくように働きかけることとしました。

またもっと奇妙なのは、子供が本国に居て日本で就業している外国人にも基本的に満額子ども手当てが出るということです。
条件として少なくとも1年に2回以上子供と面会していることとか仕送りを4ヶ月に1回しているとか細かい規定はあるようですが、ちょっと理解に苦しむ話です。
実際、554人の養子への子ども手当を申請した外国人が現れたではありませんか。
これを是正するためにも、支給要件を親(児童を養育する方)の住所地での申請ではなく、児童が居住する市町村での申請とする必要があると思います。

この子ども手当の当初支給予定額 (26,000円) は平均的な基礎的自治体において、 「個人住民税の総額」または「国民健康保険税+介護保険料+後期高齢者医療保険料」 に匹敵するほどの額でありまして、子育て環境整備だけではなく、地域が抱える様々な課題を 解決する上で必要な財源をすべて包含してしまうレベルの額となっているにも関わらず、あまりにもずさんな制度設計となっているのはとても残念です。

またもっと根本的なことでいえば、大きな問題が2つあります。
ひとつは地域主権と明らかに逆行していまるという点です。
要するに、国は実務を自治体に押し付ける一方で、使い道については自治体の裁量の余地を与えておらず、あたかも自治体をキャッシュディスペンサーとしてしか見ていないのではないかとさえ思えます。
民主党のマニフェストの1丁目1番地は”地域主権”にあったはずで、もう一度その原点に立ち返った抜本的な見直しを行っていただきたいものです。
具体的には、現行の子ども手当の中に組み入れられている自治体負担をゼロにすることはもちろん、上乗せ分につきましては自治体の裁量で子供施策に限定した現物サービスに使用できるような形にしていただきたいと思います。

もうひとつは、子ども手当は根本的な少子化対策になっていないということです。
少子化対策であるならば、恒久財源を確保することは最低条件ですが、現状はその見通しさえ立たず単に国債を発行して子どもにツケを回しながらばらまいているような構図となっています。
将来にわたって、安定的に子ども手当が支給されるという安心感がなければ、さらに子供をつくるというインセンティブにはならないのは明らかです。
実際、いつ切られるかわからないということもあって、子ども手当は貯金すると答えた家庭が半数を超えているという調査結果がそれを如実に表しています。

そもそも、こうした形で直接的にお金をばらまくというやり方ではなく、雇用を確保して安定的に子育てができる状況を作り上げる、そのためにも人材の育成や国際経済の中での企業競争力の確保などを推進する施策に注力することが求められているのではないかと思います。
しかしながら、それでもあくまでも子ども手当を推し進めていくということであるならば、次世代につけを回さないために、国の責任において赤字国債や増税に頼らない恒久財源を確保すべきです。

以上のような問題点の多い子ども手当ですから、その問題意識を共有する自治会の首長と連携して総勢32名(現在39名)で「現場から国を変える首長の会」を立ち上げました。
そして以下の要望書を政府の関係大臣をはじめ各主要政党の代表クラスの方々にお渡しをしました。

政府への提言書
子ども手当に関する緊急提言

地域主権と逆行し、少子化対策としての効果が薄く、ツケばかりが次世代に回りかねないこの制度。仮にまた政権交代がなされ事業仕分けを実施したら真っ先に仕分けられるのがこの子ども手当ではないかと思えます。
子供たちの未来のために何がいいのか、そして国のために何がいいのか、そういう視点で今後とも積極的な提言をし、子ども手当が抜本的に見直しされるように働き掛けています。

追記:
【2011.7.12】2010年度納付改善相談については、前年度と比べ保育費は87件89万円、学校給食費は45件108万円減らすことができました。
2010年度納付改善相談関連下野新聞記事

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