国民の生命財産は国の責任で守る(2002)

投稿者: | 2006年3月29日

先の日朝首脳会談において、北朝鮮は横田めぐみさんや有本恵子さんをはじめ、拉致被害者「8人の死亡」を明らかにしました。
事実とすれば、痛恨の極みであり、被害者の方々、ご家族の方々には心からお悔やみを申し上げます。
日本人の平均寿命が世界一となっている一方で、拉致され死亡した日本人の年齢はあまりにも若すぎます。
今回、北朝鮮が日本の国家主権を侵害し、人間の命を軽んじる拉致という国家テロを認めたことを踏まえれば、死亡する原因として病気ではない何かがあったと考えざるを得ません。
非常に重い事件です。
そしてまた今回の会談は結果的に日本外交の弱点を露呈した、象徴的な出来事ともなりました。
まずそのひとつとして、平壌宣言が上げられます。
会談の中で北朝鮮が国家テロを認めたからといって安易に平壌宣言に署名していいということではないのです。その前にもっと文言を精査すべきでした。
残念ながら宣言の中身はほとんど北朝鮮の言い分を聞き入れたものとなっており、バランスを欠いています。
つまり日本については北朝鮮に対する過去の謝罪や今後の経済協力が明記されている一方で、北朝鮮については「拉致」「核査察」といった言葉すらなく、あいまいな表現のままになっており、「してやられた」という感じです。
どうしてここで(北朝鮮に対して)突込みが入れられないのでしょうか。これでは後々、なんとでも言い逃れができる余地が残ってしまいます。
案の定、北朝鮮の国営テレビでは、この拉致や不審船のことは一切取り上げていません。さながら昔の大本営発表のようです。マスコミまで統制してしまう一党独裁(親子独裁)の恐ろしさがここにもありますが、同時に日本外交のお粗末さは、こうしたところからも垣間見ることができるのです。
次に二点目として、日本独自の事実確認や補償も含めた責任追及を、例え外交がなくても、もっと毅然と主張するべきということです。
金書記の「部下が勝手にやった」という釈明だけで、「はいそうですか」と了解してくるなど、小泉さんらしくありません。相手は独裁国家なのです。
このまま日本が北朝鮮の言うままに経済協力をすれば、結果的に日本自身が北朝鮮のお先棒を担ぐ”テロ支援国家”になってしまうことになりかねません。今後、人道上の北朝鮮への経済協力はなされなければならないとしても、その受け皿となるべき国家の体制が、信頼の置けない状況では手の施しようがありません。
そうした意味からも、今回の拉致をはじめとした解決しなければならない問題に対して、信頼するに足る対応を北朝鮮から引き出す必要があります。まさに日本側の外交手腕が試されているのです。
申し上げるまでもなく国家の外交・防衛施策の根幹は、国民の生命と財産を守るということです。これはもちろんわが国の憲法にも謳われている国家としての当然の責務です。
にもかかわらず戦後50年を過ぎた今でも、とりわけ外交・防衛に関しては単にアメリカ追従で、自ら考えることをおざなりにしてきましたから、こうした時にこそ必要な国家としての危機管理体制がうまく機能しなくなっているのです。
まさにその意味で、小泉さんのいう「北東アジアの平和と安定のために」、あなたまかせではない国家としてのアイデンティティをもっと明確にしていかなければなりません。

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