Home > 11月, 2014

私の下野新聞批評

ご承知の通り、下野新聞には、県内の識者が認めた「私の下野新聞批評」と題する寄稿文が定期的に掲載されています。

これはまさに下野新聞の自らへの批評を謙虚に受け止める姿勢と高い識見のなせる業であり、数ある地方紙でも最も質の高い新聞のひとつであると評価しています。

しかしながら、最近の下野新聞を拝読し、どうもこの記事はいかがなものかと感じるところがありましたので、また記事の中身が私の市長時代のことも関連しますので、このブログを使って勝手に「私の下野新聞批評」を認めたいと思います。

 

まずは、以下の下野新聞記事(2014.10.9)をご覧ください。

「市内企業の受注増へ 入札要件見直し 足利」

【足利】市は、市発注公共事業の入札要件などを見直し、市内企業への発注を増やす取り組みを進めている。本年度からは建設工事の入札で、参加資格を市内企業に限定している指名競争入札の対象事業を拡大。ごみ収集運搬では、来年度から委託先を市内企業とすることに決めた。公共工事の市内企業への発注増は、和泉聡市長の公約で、市内企業の活性化と雇用確保が狙いだ。

2013年4月の市長選で、和泉市長は「県外に行ってしまった市発注の仕事を取り戻し、可能な限り市内企業に発注する」と訴えていた。和泉市長からの諮問を受け、庁内の市建設工事請負人等選考委員会(委員長・池沢昭副市長)で、入札要件などの見直しを行った。

建設工事の指名競争入札はこれまで、施工が難しい大規模工事などを除き参加資格を市内企業に限定。対象となる工事は予定価格500万円未満だったが、本年度から2千万円未満までに引き上げ、市内企業の入札参加の機会を拡大した。

市総務部によると、和泉市長就任前の12年度(4~9月)は、市の建設工事や関連業務の契約132件のうち、市内企業への発注は103件で78%だったが、14年度(同)は123件中、112件の91%と増えた。

指名競争入札は一般競争入札に比べて競争性が損なわれ、価格が高止まりしやすいという懸念もあるが、同部は「十分な入札参加者の確保に配慮しながら、進めていく」と説明している。

 

要するにこの記事では、主に私の市長時代よりも、現在のほうが公共事業の市内企業の受注が増えたということを具体的な数字を挙げて伝えたいのだと思います。

 

しかし、なのです。

 

この”市内企業”という表記はいかがなものかと思います。

 

このような書き方では、私がいたずらに足利市に支店すらない市外企業に公共事業を発注していたかのように読めます。
役所用語でいうところの市内企業には、大きく分けてふたつあります。市内本社の企業と、それプラス市内に支店や営業所を設けている企業(役所的には準市内企業と称しています)とです。
従いまして、市内企業を後者と定義すれば、私の時も、現在も共に市内への発注は100%ということになるはずです(施工が困難な大規模工事などを除く)。

 

そもそも、市内に本社がある企業と、市内に支店や営業所を設けている企業の違いは何でしょうか。
(1)少なくとも市税収入面では、市内に本店があろうが支店だろうが関係はありません。それ以外の、例えば地域密着の各種活動などでは、市内本社企業のほうに一日の長があることは誰しも認めるところです。
(2)また、市内に支店や営業所を設けている市内企業には、多くの足利市民が勤めています。逆に、市内に本社があっても市外から通勤している方は大勢います。
(3)さらに長期的な視点で大局的に見れば、こうした企業が入ることによる切磋琢磨が市内経済の発展につながるのです。いたずらに排外主義をとれば、それは結局のところ自分の首を絞めることになることは世界中の歴史が証明しています。

 

以上の点から、私は市内本社企業にも配慮してその発注割合の拡大に尽力しましたし、市内に支店や営業所のある企業にも一定の配慮をして参りました。
【参考】
私の代(平成21年以降)で公共工事に関しては、市内本社限定の枠を増やしています。特に平成24年度は、全ての公共工事に関して1年を通じて市内本社限定にしています。
足利市公共工事発注基準

 

さて、本題に入りますが、今回の市発注公共事業の入札要件などの見直しに関する問題の本質は、市内企業重視という美辞麗句のもとに指名競争入札の対象枠を500万円から2000万円まで広げてしまっているということです。

 

私の市長就任以前より、指名競争入札では競争性が損なわわれ、結果として請負率が高くなってしまい税金の無駄使いにつながりかねないという懸念から、国の方針により段階的に一般競争入札に移行するすということが決まっていました。従いまして、その方針にもとづいて、私の時に指名競争入札の対象枠を1000万円から500万円未満の事業に縮減したのです。

 

それを今回ドカンと2000万円まで枠を広げるというのは、まさに時代に逆行しています。これでは不利益を被るのは市民ということになりかねません。

 

本来、クオリティペーパーである下野新聞にはそこを鋭く指摘してほしかったのですが、記事の最後に「価格が高止まりしやすいという懸念」とふれてはいますが、見出しの「市内企業受注増へ」がひときわ目を引き、肝心の指名競争入札の枠拡大という問題の本質が全然わかっていない(あるいは、わかろうとしない)印象はぬぐえません。

 

下野新聞におかれましては、指名競争入札の上限枠を4倍も拡大させてしまう自治体が他にあるのかどうか、また入札に関する時代の流れはどのような方向に向かっているのか、さらに今回の件の本当の背景は何なのかなどをよく掘り下げて調べた上で、適切に報道していただければありがたく存じます。